(………へ?)
目の前で私のソフトクリームに食いついた至近距離にいる黒王子を見つめるしかない。
『……ん、旨い。』
「――っっ」
私のソフトクリームから離れて行く黒王子が、スローモーションに見えた。
な…っ、な、なななな…!!?
驚愕のバロメータを振りきった今、私はろくな言葉も紡げなかった。
手に残ったのは、少し量が少なくなったソフトクリーム、バニラ味。
目の前で起こった出来事に、完全にフリーズしてしまっている私に対して、黒王子は口を開く。
『ボケっとしてるから溶けてた。…だから食った。』
「……は?」
意味が分からないっ…!
溶けてるなら溶けてるぞって言ってくれればいいものを…なぜ食べる!?
『…溶けてる。残り全部、俺が食ってもいいのかよ。』
「っ…!たっ、食べるよ!」
いつの間にか黒王子が食べていたのいちごソフトがなくなっていることに気付いていたら、そんなことを言われて、慌てて残りのソフトクリームに口をつけた私。
――その瞬間。
(……あ。これって、これって、間接キッ――…)
こんな時だけ、妙に頭の回転が良くなる自分を呪いたくなった。

