特に今日は、栞奈の悪い部分が前面に出ている気がする。

俺と颯太の名前しか呼ばず、さっきの写真撮影も、アイツだけをハブったりして。

――見ているこっちが、気分が悪い。


『お待たせぇ~っ!』


苛立ちを隠しきれず、眉間に皺を寄せていると、砂糖のように甘ったるい声を発しながら栞奈が戻ってきた。

その隣に、アイツはいない。

一人、この場にいないのにも関わらず、栞奈は次どこ行く?などと歩き出そうとしている。


「――おい、栞奈。」

『ん?どうかした?』


最初から嫌な予感はしていた。

栞奈が俺達に関わると、結構な頻度で割と良くないことが起きるからだ。

薔薇園のマップを見ていた栞奈が見上げて、俺を見つめる。

颯太曰く、栞奈の上目遣いは世界一らしいが、俺にとってみれば痛くも痒くもないもので、いつも以上に冷たい目で栞奈を見下ろした。


「アイツ、どうした。」

『あー、石川さん?』


思い出したようにアイツの名前を口に出した時の栞奈は、女の陰湿な部分を曝け出したかのような、見ているこっちが不快になる顔をして見せた。