遠足の下見なんて、この3人で行けばよかったのではないか。
どうして私がこの場にいるのか。
このハブられたような空間に、ずっと耐えなきゃいけないのか。
……そんな小さな不満達は、河上さんの何気ない一言で大きく膨れ上がっていった。
『――ねぇねぇ、写真撮って!』
「えっ?」
仲良く並んで薔薇園を歩いていく3人の後ろを、はぐれない程度に歩きながら、気を紛らわすために薔薇を見つめていた私に振り向いた河上さんは、どこかのアイドルのような笑顔で私にキラキラとデコレートされたスマートフォンを差し出してきた。
どうやら、薔薇をバックに王子2人とのスリーショット写真を撮ってもらいたいらしい。
嫌だなんて言えない私は、おずおずとカメラモードに設定された河上さんのスマートフォンを受け取り、3人にスマートフォンのカメラレンズを向ける。
私にスマートフォンを渡した河上さんは、満足気に黒王子と白王子の間に立って、それはもうアイドル並みのぶりっ子全開のポージングと笑顔を取って見せた。
「行きますよー。…はい、チーズ。」
どこかの雑誌の表紙を飾れるくらいの抜群の笑顔を向けた白王子と河上さんとは対照的に、黒王子は私の掛け声にも反応せず、目線も会わせずに仏頂面だ。
おかげで撮った写真が、楽しいのかよく分からない一枚になってしまった。
……写真撮るときくらい笑いなさいよ。
そう思うけれど口になんて出せない私は、スマートフォンの回収をしに来た河上さんにそれを渡した。

