『颯太!斗真!こっち来て~ッ!』
何気なく、河上さんが無邪気な笑顔を向けて王子2人を手招きしている。
……この薔薇園の名物の珍しい薔薇を見つけたらしい河上さんは、王子2人にそれを見せたくて見せたくてたまらないのか、早く早く!と急かしている。
『うわ、すごいねーこれ。』
『でしょでしょ!?可愛くない!?』
真っ先に河上さんの元に向かったのは白王子。
その次に、ゆったりと、少し面倒くさそうにしながらも薔薇を見つめている2人に近づいた黒王子が、咲き誇っている薔薇達に近づく。
『斗真もちゃんと見てよ!』
『……うっせ。言われなくても見てる。』
『本当にーっ?』
黒王子と白王子に挟まれて、河上さんはすごく楽しそう。…っていうか、幸せそうだ。
その瞳には、私なんかの存在は一ミリも映っていないようで、薔薇に囲まれた王子2人との世界にどっぷりと浸っている様子。
……私、本当にどうしてこんなところにいるんだろう。
幼馴染3人から、近くも遠くもない中途半端に離れた距離にいる私は、その3人の後姿を見つめながらそう思った。

