――『きゃあーっ!素敵~~っ』
薔薇園に入園して早々、女の子らしい声をあげたのは河上さん。
そんな細い身体でよくもまぁそんな大きな声が出せるな、と思いつつも、私も薔薇園に咲き誇っている無数の薔薇達に目を向けた。
実を言うと、生で薔薇を見るのは、これが初めてだったりする。
薔薇なんて、タンポポみたいに道草に生えているようなもんじゃないし、花に興味なんてものは元々から持っていない私が見たことがあるのは、いつの日か教科書に載っていた品種改良を重ねて咲いた青色の薔薇の写真くらいで。
実物って、初めて見たなぁ…。
『…意外と9月の遠足、皆楽しんでくれるかもね。』
入園早々、キャッキャッと小さな子供のようにテンションを高めている河上さんを見ていた白王子が、どこかホッとした表情でポツリと呟いた。
……ああ、そう言えば、今日ここに来たのって、9月に行く遠足の下見、なんだっけ。
ここに来る途中、私が黒王子から何も聞かされていないことを知った白王子から、薔薇園にこのメンバーで行くことになった経緯を教えてもらった。
その中で一番驚いたのが、黒王子がなんと、生徒会役員で、しかも副生徒会長をしているということだった。
一番学校に貢献しなさそうな人材なのに、一体なぜ…という疑問は、白王子が強引にあの人を誘ったということを聞いて妙に納得した。
白王子はいかにも生徒会長タイプだ。
規律正しく、品行方正に、清く美しく、学園生活を全うするタイプ。
何で貴方が副会長にならなかったの、という白王子に対する不満は若干あるが、それは胸の内に留めた私だった。

