確かに、薔薇園に行く前から邪険な空気を漂わせるのは、白王子とその隣にいる女の子に悪い。
無理矢理に逆立っていた心を沈ませて、結局は私のほうが折れたのだった。
そんな大人な私とは裏腹に、黒王子は何もなかったかのようにすまし顔をしている。
……何でそんな顔まで格好良いのよ、この野郎。
『あ、2人とも自己紹介まだだったよね?』
少し重苦しかった空気を払拭させるように明るい声を発したのは白王子だった。
朝からキラキラとお花畑が周りに広がるような善良な微笑みを見せている。
『この子、河上 栞奈。俺達の幼馴染なんだ。クラスも俺と斗真と一緒でね。良い子だから仲良くしてね。』
『よろしく~!』
ヒラヒラ、と私に向かって振られた白くて華奢な手元からは、可愛らしいパステルカラーのビーズで装飾されたブレスレットが覗く。
当たり障りのない愛想笑いに対して、私も自分ができる精一杯の笑顔を取り繕った。
『で、えっとこちらが、』
「い、石川 遥です。どうぞ、よろしく。」
第一印象くらいは良くしておこうと、軽く会釈をして見せた。
白王子と黒王子、河上さんは幼馴染。
……その中で、どうして私がいるのだろう。
そんな疑問を心に抱きつつ、じゃあ行こうか、と言ったこの場の仕切り役の白王子に着いていくのだった。

