『……それは…誰と、行くのかな?』
「と、友達だよ。」
う。ちょっと声が上擦ったか。
驚きを隠しきれない修哉さんの問いかけに、少しばかり動揺してしまったが、ここは強行突破するしかない。
相手が男なんて、修哉さんには口が裂けても言えない。
修哉さんに男子と2人で薔薇園に行く、と言うのは、実の兄にそれを言う妹の気持ちと類似していた。
なんだか気恥ずかしい…というのが、本音である。
それに、黒王子と薔薇園へお出掛け、なんていかにも誤解を与えやすいことを、そう易々とは言えなかった。
ただでさえ、集合時間である10時が刻々と差し迫っているこの状況で、こんなことになってしまった経緯を話す時間はない。
そもそも、修哉さんには、黒王子とぶつかって、あの人のスマートフォンを壊してしまったことでさえ、一言も話してなどいないのだから。
それこそそんなことから話していたら待ち合わせに遅刻する。
これ以上、アイツに嫌味を言われたくはない。
『……そっか。帰りは何時くらいになる?』
意外と私のぎこちない返答に何も口出ししなかった修哉さんは、滑らかな動作で味噌溶きを再開している。

