「何よ?それ以外に何があるの?」


明日香も喜んでくれると思ったのに、想像と真逆の反応を返されて、少しいじける。

……"良かったね"の一言くらいあってもいいのに。

小学校の頃は、明日香もウチの道場に通っていた時期があったから、おじいちゃんが物凄く厳しいことくらい知ってるはずだけど。


『てっきり、広瀬さんと何かあったんじゃないかってね!』

「修哉さん?……何で?」


"広瀬"というのは、修哉さんの苗字だ。

どうして私の機嫌が良いのと修哉さんが結びつくのか分からない私は、明日香に向かって首を傾げた。

……確かに、修哉さんとの夕方の試合は楽しみではあるけどさ。


『血の繋がっていない男と女が同じ屋根の下で2人きり…何かあると思うのは当然でしょ?』

「…いや、おじいちゃんいるんですけど。」

『兄のように慕っている女と、妹として扱おうとするもどうしても女性として見てしまう男の葛藤を描く、禁断ラヴストーリー……』

「おーい、明日香さーん!」


天井を見上げて目をハートマークにさせながら、よく分からないことをぶつぶつと言っている明日香の顔の前で手を振ってみるが、応答なし。

……また始まっちゃったよ。

恋バナが大好きな明日香が、私と修哉さんを脳内恋愛のおかずにしていることは前から知ってるけど…そろそろ完結させてよね、その昼ドラみたいなドロドロな恋愛物語。聞いてるこっちが身が持たない。