「あのさ明日香、ウチの高校はっ――」
『この左にいるのがね、白王子!で、その隣に立っているのが黒王子よ!どう!?めっっちゃイケメンじゃない!?』
……私の話は無視ですか、明日香さん。
持ち込みを一切禁止されている教室内で、堂々とスマートフォンを手にした明日香は、それを私と自分自身に交互に向けながら、王子がいかにイケメンであるかを熱弁している。
どうやらそのスマートフォンの液晶画面には白王子と黒王子2人のツーショット写真が映し出されているらしく、画面を見つめる明日香の瞳はハートマークと化している。
『この茶髪イケメンはね、白王子こと山下 颯太くん!先週誕生日を迎えたばかりの16歳!1-7の出席番号が25で、身長176センチ、体重61.3㎏、足のサイズは26センチ、バストが確か――…』
バストって。男子なのに、バストサイズの情報って必要なのか?
明日香の細かすぎて伝わらない情報を、右から左へと受け流す。
何度も言うけれど、学校中でもてはやされている王子達の素性なんか、私にとっちゃどうでもいいのだ。
つまり、聞いても聞かなくても、私には一切支障はない。
――そう思っていた。白王子の情報を語り終えて、黒王子のことを喋りだした明日香の言葉を聞くまでは。

