「…じゃあ、2人で行ってくれば?」
普段、空気を読むのは面倒だと思っているが、この時ばかりはその空気に感謝した。
栞奈は知らないが、颯太は栞奈のことが好きだ。
颯太の内心は、俺よりも栞奈と一緒に行きたいはず。
丁度いいことに、俺も薔薇園に行く気なんてないわけだし。
我ながら良い名案を思いついたと思っていた。
『え!?斗真行かないの!?』
――が。
一目散に俺の言葉に反応した栞奈が、至極悲しそうな声を出した。
終いには、俺が行かないなら栞奈も行かない、などとおかしなことを言い始めている。
……何でそうなるんだよ。
栞奈の後ろで、俺を睨みつけてくる颯太の顔が怖い。
――本当、栞奈のことになると颯太って性格変わるよな。
「あーもう、分かった分かった。行くよ、行けばいいんだろ。」
『やったー!じゃ、皆で薔薇園ねっ!』
何もかも面倒になった俺は、仕方なく頷いて見せた。
憂鬱な俺とは対照的に、栞奈は飛び跳ねる勢いで喜んでいる。
その時、栞奈の友達に呼ばれた栞奈は、じゃあまた後でね、と嵐のように去って行った。
「……はぁ。」
『ごめん、斗真。』
無意識に溜め息が零れてしまった俺に、颯太は眉を下げて小さく謝る。
「…お前も、もうちょっと押してみろよ。そのままじゃ、いつになってもモノにできねーぞ。」
『……うん、分かってる。』
正直、俺を愛だの恋だのそんな面倒なものに巻き込まないでくれと、思った。

