『――遥ちゃん。』

「わわっ!?」


私に挨拶をしながら帰っていく子どもたちを見送っていると、突如背後からかかった和らげな声に驚いた私は、肩をビクつかせた。


「び、ビックリしたー…脅かさないでよ、修哉さん。」

『ゴメン、そんなつもりじゃなかったんだけどね。』


相手が修哉さんと分かって、心の底から安堵していると、私の傍にやってきた修哉さんは申し訳なさそうに苦笑いを零した。


『自主稽古でもしてたの?』

「あ、うん。おじいちゃんに子ども達の面倒はいいから、自分のことをやれって言われてね。」


庭の模擬人形の前で竹刀を持ったままだったからか、察しの良い修哉さんに言い当てられて内心ちょっと驚く。

私の横を通り過ぎ、模擬人形に近寄った修哉さんは、模擬人形の強度を確かめながら、そろそろ取り換え時かなーなんて呟いている。

庭の模擬人形は私だけじゃなく、修哉さんもおじいちゃんも使っているから、案外長持ちしない消耗品だ。