――「面打ち、はじめーーっ!」
『『『めぇーんっ!』』』
その日の夕方。
修哉さんとの稽古前に、私は道場でおじいちゃんの手伝いをしていた。
『……遥。』
「、おじいちゃん。」
道場の子どもたちが私の合図で面打ちの練習をしているのを見ていると、剣道着を身に纏っているおじいちゃんが私の所までやってきた。
『今日は修哉と稽古するんじゃろ。子ども達の稽古はもうワシに任せて、自分の稽古をしていろ。』
道場においてある古びた時計を見てみれば、5時30分を指していた。
制服から道着に着替えてここにやってきて、もう1時間経つのかと少し驚く。
剣道をし始めると時間の感覚が鈍ってしまうのはいつものこと。
「でも、まだ胴打ちと練習試合が残ってるけど、」
『ワシが見よう。…お前は自分のすべきことをせい。今朝の稽古の様子じゃまだまだ修哉から一本を取るのは難しいぞ。』
「……はい。ありがと、おじいちゃん。」
おじいちゃんの言っていることは自分でも痛感していたから、この時ばかりはおじいちゃんの言葉に甘えた。

