『朝早いのは慣れてるでしょ。遥、今も朝稽古してんだよね?』
「まぁねー。でもウチの道場で朝稽古やった方が、お風呂にも入れるし、ご飯もいっぱい食べれるしさ。」
うん、やっぱり部活は入らない、と明日香に説明しながら思った。
部活に入ったほうが、私にとって不都合が多すぎる。
「ってか、明日香も知ってるでしょ?私のお小遣いは、道場の手伝いによって金額が変わるって。」
『……ああ。一回、道場の子どもたちに稽古をつける度に500円、だっけ?』
「そうそう。」
修哉さんが道場に出て子どもたちに稽古してくれる時もあるけど、それは一週間に一回あるかないか。
おじいちゃんだけでは道場に出入りする子どもたち全員の稽古をつけることなんて無理だから、まだまだ未熟者の私がおじいちゃんの手伝いをしているってわけ。
修哉さんが平日もう少し早く帰って来てくれればいいんだけど…って、働く人にそんなこと言っても無理だよね。
『遥だったら、絶対主将を張れると思うんだけどな~。』
「あはは。1年の私じゃ無理でしょ。」
『何言ってんの、その見てくれで剣道2段のクセして。』
……その見てくれって、どういうこと?
一部分引っかかる所はあったけど、明日香の分かりにくい褒め言葉に"どうもー"と返す。
そう言う明日香だって剣道1級のクセに。
…あのまま一緒に剣道やってたらどんなにいいかと一瞬考えた私だけど、すぐにその考えを取り払って、来週のカラオケについて早くも熱弁を始める明日香の話を聞ききながら帰った。

