『ってか、ぶつかった相手の男子ってどんな人なの?』
「ん?」
『"ん?"じゃないわよ。名前聞いた?学年とかクラスとか、当然聞いたのよね?』
明日香に問い詰められて気づく。
――そういえば私、アイツのこと何も聞いてないわ。
「ご、ごめん…聞いてない…。」
『アンタ、バカなの!?ぶつかった相手の素性も知らないんじゃあ、弁償したくてもできるわけないじゃんッ!』
おっしゃる通りです、明日香様…。
怒りを露わにする明日香が怖すぎて、ひたすらペコペコと謝ることしかできないチキンな私。
騒がしいクラスの中で、私達に向けられるクラスメイトの視線が痛い。
『……とりあえず、その人の特徴言いなさいよ。』
「え?」
『背格好とか顔つきとか、何かあるでしょ。そこから分かるかもしれないし。ほら早く。』
ちょっぴり怒りを静めてくれた明日香にビクビクしながら、うーんうーんとぶつかった時のことを頑張って思い出す。
「えっと、背は私よりも大分高くて…170後半くらいかな?顔はー…とにかく格好良かった。」
『遥……格好良い人なんていっぱいいるでしょう。中途半端なイケメンならありふれすぎて分かんないわよ。』
「そ、そう?でも本当に顔は格好良かったんだって。」
あの太々しい態度の方が印象的過ぎて、イケメンのことを忘れそうになっちゃってたけど。
あんな性格だったら、顔が良くてもモテないんじゃないかなーと少し心の片隅で思った。

