「3年生って…誰だろう?」
『さぁ?私も初めて見た人だったー。』
入学して早2ヶ月ちょっと。
部活にも委員会にも入っていない無所属な私は、同級生に知り合いはいても、上級生に知り合いなんて一人もいない。
いくら考えても、該当するような人物は検索できなかった。
「その人、他には何か言ってた?」
『別に?今はいないって言ったら、じゃあまた来ますって。名前もクラスも言わずに行っちゃったー。まあ、また来るって言ってんだから、遥は待っとけばいいじゃない?』
「そ、そうだね…。」
なんだか申し訳ない気もするけど、大人しく待つことに決めて、体操服を畳むのを再開する。
――まさか。
体操服を畳み終えた瞬間、嫌な考えが脳裏を駆け巡っていく。
あの上から目線男の彼女さんじゃ――!?
『アンタがぶつかったせいで、斗真と連絡できなくなっちゃったじゃないの!どうしてくれんのよっ!』なんていうクレームを言うためにわざわざ私のところに来たんじゃ――…
「どっ、どうしよう、明日香ぁ~!」
『え!?何、いきなりどうしたの!?』
明日香には言わないでおこうと思っていたけど、何だか急に恐怖に見舞われた私は明日香に泣きついた。
『話はちゃんと聞くから、とりあえずその体操服は返して来な?ね?』
「ん、分かった…。」
泣きつく子どもをあやすかのように明日香に言われて、泣く泣く体操服を返しに教室を出たのだった。

