黒王子は不器用な騎士様!?




「お疲れー。」

『まぁそんな落ち込みなさんなって。体操服忘れたことは先生にばれなかったんだからさ、まだ不幸中の幸いってヤツじゃん!』

「いや、うん…まぁ、そうなんだけどさー。」


明日香のフォローも、苦笑いしか返せない。

遅刻は授業後の後片付け、体操服忘れは放課後の体育教官室の掃除が罰として課せられている。

だから、体育の授業だけは皆忘れ物をしないように、遅刻をしないようにと必死なのである。


でも、私が落ち込んでいるのはそのことだけじゃなかった。

憂鬱な気分の要因は、ぶつかった相手の壊れたスマートフォンの弁償と、その持ち主であるあの上から目線男。

あのまま何もなかったように学校生活を送っていくことはできない。ここの学校に通う以上は、いつかはまたアイツと会うこともあるだろうし…。

うーん、と単細胞の脳内を無意味に捻りながらも着替えを済ませていた私に、私の机でお弁当を広げ始めていた明日香が何かを思い出したように声を発した。


『忘れてた!…遥、さっきアンタに客が来てたよ。』

「え?客?」


明日香の言葉に、脱いだばかりの体操服を畳む私の手が一瞬止まる。

脳内をよぎったのは、体育前に廊下でぶつかったアイツ。私、まだ名前もクラスも教えてないんだけど…まさか、壊したスマートフォンの復讐か!?