『それより、そのスマホどうするの?』
「……修理に出すっきゃねーだろ。」
まだ買って1か月も経ってないはずだから、格安で修理に出せるはず。
……っつーか、あの女…本当に詫びをする気、あんのかよ。
俺と曲がり角でぶつかって、俺の大事なスマホを壊しやがったあの女のことを思い出す。
スマホが購入早々使い物にならなくなったのは確かにムカつくが、それよりもこの俺に突っかかってきたあの女のことが気になっていた。
アイツ……一体誰なんだ?上靴は赤だったな…じゃあ俺と同級ってことかよ。
まぁ、あの見てくれで俺より年上っつー方がおかしいけどな。
俺よりも10センチ以上は小さくて、長い髪を後頭部で一本結びにして、俺を見上げる瞳は人並み以上に大きくて、少し低めの鼻とぷっくりとした唇が印象的だった。
見た目は小動物系寄りなのに、性格は真逆だな…あんな威勢のいい女、初めてかもしれない。
『……どうかした?斗真。』
「別に。…行くぞ。」
この時の俺は、あの女のことを、"周りにはいないタイプの、からかい甲斐のある女"としてしか、見ていなかった。

