――斗真 Side――
『あ、あのっ、本当にごめんなさい!お詫びはまた今度必ずするんで、今はこれで失礼します!』
そう言って、尻尾を巻くようにこの場から走り去っていった体操着姿の女の背中を終始見送っていた俺。
「……何でお前がここにいんだよ。颯太。」
姿が見えなくなった廊下から、傍にいる颯太にウザったい気持ちを前面に出してそう言った。
颯太はガキの頃から一緒にいる腐れ縁だ。幼馴染と言えば聞こえはいいが、俺の全てを知り尽くしているコイツの存在は、少し気持ち悪いと思う。
『授業が始まっても教室に来ない誰かさんを捜しにね。』
「チッ…お前は俺の母さんかよ。」
ふざけんな。そんなことで授業抜け出してんじゃねーよ。
どんなに俺がそっけない態度を見せても、颯太は何も気にしていないそぶりで、そのふわりとした笑顔を俺に向けてくる。
昔から人の顔色の変化に敏感で、自分より相手を思いやることを一番に考えているコイツが、今校内で"白王子"と周りにもてはやされているのも当然だとは思う。

