未だ無愛想な顔をして私を見下ろしている彼と一瞬目が合った。
あれで"悪気はない"って言われてもな…。
ぶつかった後のあの態度を見て誰もその言葉を信じる人はいないだろう。でもそこは頷くしかなかった。
ここで自我を付き通しても、話がまとまらないだけだ。
『ありがとう。……それはそうと、もう授業始まってるけど、大丈夫?』
「あ!――やばっ」
言われて気付く。
その瞬間、校庭から号令走をする生徒たちの声が聞こえた。
もう準備体操終わってんじゃん…ッ!
「あ、あのっ、本当にごめんなさい!お詫びはまた今度必ずするんで、今はこれで失礼します!」
2人に頭を深く下げた私は、逃げるようにこの場を立ち去った。
――校庭にようやく到着した私が、体育の先生に怒られて、授業後の後片付けを命じられたのは、言うまでもない。

