ぺリッと私と彼を引き剥がしたのは、この目の前にいる男同様に怒り振蕩していた私の頭が冷えるほどに格好良い男の子だった。
でも、私がぶつかった相手よりも、その男子は優しさが全身から溢れ出ていて、いかにも平和主義な、天使のようなオーラを纏った人だった。
――この人、絶対性格良いな。
私と彼の間に割り込んで、私達をどーどーと宥めさせようとしているその人の第一印象は、そんな感じだった。
『斗真、買ったばかりのスマホを壊されて怒っちゃうのも分かるけど、その態度は良くないと思うよ。それに、それが壊れたのも不可抗力だし、こうやってこの子も謝ってるんだしさ。』
「……!」
態度の悪いその男に、諭すように優しく言葉をかける割り込み主に、私は至極驚いた。
まさか、私のフォローをしてくれるなんて、思わなかったからだ。
傍から見れば、私の方が悪い。走行禁止の廊下で走っていたし、よそ見してたし。……それもこれも、体操服を忘れたからだし。
『ごめんね。』
「えっ…?」
いきなり"斗真"と呼ばれている男から、私に振り向いた天使のような男子に笑顔を向けられて、私は色んな意味でドキリとする。
固まったままの私に、その男子は申し訳なさそうにこう言った。
『斗真のヤツ、元々こんな感じなんだ。悪気はないから、許してくれる?』

