『言いたいことはそれだけかよ。』
「は……っ?」
怒りの感情を勢いそのままに一気に捲し立てたからか切れかかった息を肩を上下させながら整えていると、上から声色を全く変えていない言葉が降り掛かった。
私の言葉なんか心に響いてもいないようで、漆黒の瞳は冷たく私を見下ろしている。
『割ったのはアンタだろ。責任転嫁してんじゃねーよ。』
「ッ~~~……!」
何コイツ……!
何でこんなに上から目線なわけ!?
コッチが大人の対応をしようとしてんのにペラペラと……ッ!
怒りの沸点のバロメータが、今にも振り切りそうだった。人生の中で初めて会うタイプに、私の脳内は最早どうしたらいいのかわからない。
この人にぶつかったのは私も悪かったという自覚もある。液晶が割れたスマートフォンも弁償すべきだという罪悪感も当然ある。
だけど……
ここまで言われて、はいそうですかと引き下がるのは、私の性格上ムリだった。
「ちょっとアンタねぇっ!」
『まぁまぁまぁ!落ち着いて、2人とも。』
「っ!?」
また文句の一つくらい言ってやろうと、相手に掴みかかった瞬間、邪険な空気を払拭するかのように私と彼の間に柔和な声が割り込んできた。

