「またな、遥!」
「…気をつけて帰りなよ、俊」
今日も先生と呼ばせられなかった。
そんな敗北感を抱えながら俊を見送った後、修哉さんと王子二人の元へ戻る。
「お待たせ。二人とも、こんな夜遅くまで付き合わせてごめんね。親御さんたち、心配してない?大丈夫?」
「剣道場の稽古見学、面白かったよ。家のことは大丈夫。もうガキじゃないし。なぁ、斗真」
「…ああ」
白王子の心優しいお言葉に安堵する。
…それにしても、黒王子…いつになく言葉数少なくない?
やっぱり長く引き止めちゃったのが原因かな。
興味ないことには、とことん興味なさそうな人だし。これ以上この空間にいることも、黒王子にとっては不快だろう。
「あまり豪勢なおもてなしもできなくて悪かったわ。じゃあ、気をつけて…」
「あ、そうだ遥ちゃん。この前、お隣さんからいただいたタケノコ、二人にお裾分けできない?」
ここで解散しようとした矢先、修哉さんから思わぬ言葉が飛び出した。
3日前にお隣さんから頂いたタケノコ…確かに、大きなコンビニ袋3つ分のタケノコは到底我が家では食べきれない量だった。
「いいけど、頂いたタケノコ、もう仕込み終わっちゃったよ…」
頂いたものを、食べきれないからと他の人に譲るのはどうしても失礼じゃないかと思い、しばらくはタケノコ生活でいいかと、一気に仕込んでしまったのだ。
「あ、そうなの?それなら、今から二人、家に来る?よかったら、夕ご飯でも食べて行かない?」
「ちょっ、修哉さん…!」
なんてこと言い出すの?!修哉さんったら!
想定外のことを口にした修哉さんの口を塞ぎたくなる衝動をなんとか抑えた自分を褒めて欲しい。

