「へぇ。そんなに仲良いんだ」
「当たり前でしょ?ね、修哉さん」
「ああ」
修哉さんと微笑み合うたびに、心の奥がじんわり温かくなるのを感じる。
これが家族の温もりなんだって、幸せを噛み締めたくなる瞬間だ。
「あー!また遥と修哉先生がイチャついてるぞー!」
「はっ!?…俊!また人のことからかって!いい加減、私のことは先生と呼びなさい!」
冷やかし声が聞こえた方へ顔を向けると、胴着から私服へと着替えを終えた子どもたちが私たちのことを興味津々に見つめていた。
その真ん中には、私と修哉さんが2人でいると、すぐに茶々を入れてくるイタズラ小僧、俊だ。
「やっだねー!遥は遥!先生だなんて、ゼッテー呼ばねー」
「生意気な…俊!ちょっとこっち来な!」
本当に俊には手を焼いてしまう。
私に懐いてくれてるのは嬉しいんだけど、先生としての敬意を感じないのはいかがなものだろうか。
今日こそは先生と呼ばせてやると、俊に近づく。
「遥先生ー!修哉先生独り占めしてずるーい!」
「えっ?!そんなのしてないよ、沙希ちゃん!?」
思わぬ女子陣からの攻撃に、一瞬怯む。
沙希ちゃんの隣には、ムスッとむくれる美奈ちゃん。
子どもたちに好かれるのも難しいのを実感する。
「次のお稽古は絶対、ぜーったい、修哉先生がいい!!」
「ぜ、善処します…」
いつもは大人しめな美奈ちゃんからのご要望に、強気な反論はできなかった。
なんか傷つくんだけど…。
「じゃあ、遥は俺の相手な!」
「コラ、俊!アンタは今日、師範に私以外の先生と稽古しなさいって怒られたばっかでしょう?!」
「遥が怒ったー!」
「あっ、待ちなさい!俊ー!!」
さっきのやりとりなんて気にも止めずに横槍を入れてきた俊を追いかける。
「「「遥先生、修哉先生、さようなら〜」」」
道場外の大きな庭で走り回る俊を腕の中に捕まえた頃には、ほとんどの子どもたちが帰った後だった。

