「早素振り、残り10回ー」
稽古終盤。
「美奈ー肘曲げるな!」
「俊!竹刀上がってない!」
「康太!リズム遅い!みんなとズレてんの分からんの!?」
竹刀を一心不乱に振りかざす子どもたち一人一人を見ながら、できてないところを指摘していく。
「さーん、にー、ラストー!」
最後の早素振り100回終えた頃には、さすがに子どもたちもヘロヘロだ。
終わった瞬間、その場に座り込む子たちがほとんど。
「…みんな、お疲れ様。稽古はこれで終わり!最後の力振り絞って号令しよう。起立!」
まだ息も絶え絶えな子たちを立たせて、終わりの号令をかけて、今日の稽古を終えた。
「遥ちゃん」
「修哉さん!」
稽古が無事に終了し、水分補給しに行く子どもたちの後ろ姿を見つめていると、修哉さんに呼ばれた。
あ、そうだ。
黒王子と白王子、どうしたのかな。
修哉さんの元へ駆け寄ると、そこにはまだ王子たちの姿があった。
「えっ…もしかして、今までずっと見学してたの?」
「石川さん、すごいね。一瞬で子どもたちのダメなところ指摘してて」
開口一番、そう言って褒めてくれたのは白王子。
一瞬で分かるのは、この十数年、剣道をかじってきた身としてわかってしまうだけだから、特異でも何でもない。
それをいうなら、修哉さんの観察眼の方が長けている。
一瞬で、子どもたち一人一人のその日の体調までわかるんだから。
「私は全然。修哉さんやおじいちゃんに比べたら、まだまだだよ」
「そんなことないよ。遥ちゃんの指導は、いつも的確で丁寧なこと、子どもたちもちゃんとわかってる」
「…修哉さん」
本当に修哉さんは、人を褒めることが上手で、人をやる気にさせることが上手な人だ。
それも、修哉さんが嘘ではなく本当のことしか言わないことを知っているから、余計に嬉しいんだよね。

