「それで?お客さんって誰だい?」
二人分のお茶とお菓子をお盆にのせたところで、胴着に着替えた修哉さんと合流し、一緒に道場へと向かう。
「私の同級生。たまたま帰り道が同じで、一緒に帰ってきたところをおじいちゃんに捕まっちゃったの。道場を案内するって言ったくせに、おじいちゃんってば疲れたの一言で私に放り投げて。もう嫌になっちゃう」
「ハハッ。師範らしいな」
「もう、笑い事じゃないよ」
「じゃあ、俺はお客さんの相手かな?」
道場に着くと、奥から未だ和気あいあいとした子どもたちの声が聞こえる。
何かトラブルを起こした訳ではなさそうだ。
「うん、それもお願いしたいけど…きっと子どもたちは修哉さんにも稽古して欲しいっていうだろうから」
「もちろん、子どもたちの相手もするよ」
「任せて」と、ウインクをくれる修哉さんは本当に頼り甲斐のある男性だ。
血はつながっていないものの、こんな理想のお兄ちゃんのような存在が、すぐ隣にいてくれることは私の人生でとても大きな財産だ。
「ありがとう」
道場に入る前に、さりげなく私からお盆を持ち上げた修哉さんに微笑んだ。

