「おい、遥」
「おじいちゃん、何?」
道場の玄関先で、おじいちゃんに会う。
「わしは疲れた。今日の稽古は、お前に任せる」
「え、それは良いけど…あ!おじいちゃん、あの見学の二人はどうするの?」
道場を案内すると言ったのはおじいちゃんだ。
この責任はちゃんと取ってもらわないと。
そう思って問いかけると、なんとも無責任な言葉が返ってきた。
「見学?そんなもん、建前じゃ。子どもたちが飽きたら、帰せば良い。」
「そんな!それはあまりにもお客様に失礼よ!」
おじいちゃんってば、剣道に関する礼儀作法には鬼のように厳しいくせに、どうしてこういうところは抜けてるっていうか、非道なの?
天才って、そんなもの?理解できない…。
呆れた顔を見せる私を一目見ることもなく、おじいちゃんは背をむけた。
「それなら、茶でも出してもてなせば良い。後は任せたぞ、遥」
「おじいちゃんの鬼!」
子どもたちの稽古だけならまだしも、自分が強引に招き入れたお客様の対応まで私に投げるなんて!
でも、おじいちゃんの天邪鬼から出てくるハプニングはいつものことで、一息ため息をはくと、そのまま着替え室へと向かった。

