道場に近づくにつれ、子どもたちのワイワイとした楽しげな声が大きくなる。
「みんなー!遥が帰ってきたぞ!」
道場に足を踏み入れると、俊の掛け声が場内に響き渡る。
なんだか、王様が帰ってきたかのような俊の掛け声に、私は苦笑いしか出ない。
「「「遥先生!!お帰りなさい!」」」
子どもたちの温かな声に迎えられ、私はあっという間に子どもたちに囲まれた。
「みんな〜!ただいま!私が来るまで、ちゃんと師範のもとでお稽古頑張ってたかな?」
「「「うん!」」」
よしよし、と私を囲む子どもたちの小さな頭を撫でていく。
「ねぇ、遥先生〜!先生も稽古しよー!」
「うん、もちろん。今すぐ着替えてくるから待ってて」
「遥先生〜!あのお兄ちゃんたち誰〜?」
早く早く、と稽古をせがまれていると、遠くの方でかけられた言葉にハッとした。
振り返れば、ニコニコと子どもたちに愛想を振りまく白王子と、興味なさげな表情を前面に出している黒王子がいる。
そうだった…あの二人、連れてきてたんだった…。
「お兄ちゃんたちは私の友達。今日はみんなの稽古が見たいってわざわざ来てくれたんだよ。みんな、仲良くしてね」
「「「はーい!」」」
ちょっと話を盛った感は否めないが、嘘も方便。
どうせ今日だけ顔を合わせるだけだ。
詳細なことは言わなくても良いだろう。
胴着に着替える前に、2人には頃合いを見て帰ってもらおうと近づくが、白王子は持ち前の愛想の良さで子どもたちと楽しそうに談笑している。
対照的に黒王子は、子どもたちの相手をする気がないのか、擦り寄ってくる子どもたちにそっけない態度だ。
おかげで数分で、子どもたちは黒王子の周りからいなくなった。

