「えっと…なんか、ごめん。今なら私から言えば、おじいちゃんの誤解も解けると思うから、帰って大丈夫、だと思う。」
まさか、王子2人のことを、友達じゃなく、道場の見学者だと勘違いするとは思わなかった私は、未だに固まったままの2人に帰っていいと伝えた。
−–しかし。
『いや、見学してみようかな。』
「えっ?」
『あ?』
この時ばかりは、私と黒王子の反応が全く一緒になってしまったのも無理はなかった。白王子の放った一言が、あまりにも予想から外れたものだったからだ。
『見学だけでしょ?この前、剣道部の試合見て、ちょっと面白いなって思ったんだよね。ね?斗真も見てみたいでしょ?』
『俺は別に––』
『ね?』
なんだか黒王子に向けて意味ありげな問いかけをした白王子。その表情は、白王子がちょうど私から背を向けた形となっていたため、よくわからなかったけど、黒王子が重い溜め息と共に首を縦に振ったものだから、相当な威圧をかけられたのだろうと察した。
事が思わぬ方向に逸れすぎて呆気にとられていた私の腕の裾を引っ張れた感覚がして、右下へと視線を向けると、俊が早く行こうと催促して来た。
「あ、じゃあ…道場はこっちだから、中に入って…」
まだ事態を飲み込めないままに、私は王子2人を道場へと案内したのだった。

