「おじいちゃん…ただいま…」
『ああ、おかえり。遅かったな。…それで、そちらさんは?』
「え?」
俊がいないことに気づいてここまで探しに来たであろうおじいちゃんが俊を無視して、私の後方へと視線を向けたので咄嗟に振り返ると、そこには白黒王子がいた。
あ−−忘れてた。
俊の突然の登場のおかげで、すっかり忘れていた王子2人の存在。…そう言えば、まだ別れ挨拶してなかったな。
「この人たちは−…」
『うちの道場の見学か?』
「え?」
その場にいた全員がおじいちゃんの放った一言が理解できなかった。
すぐにハッとして違うと口を開きかけた私を制するように、おじいちゃんは王子2人に向かって続けた。
『稽古はもうすぐ終いなんじゃが、いいだろう。来なさい。』
「ちょっ、おじいちゃん!?」
『それと、俊。』
私の戸惑いを隠せない声なんて聞こえないかのような振る舞いで、おじいちゃんは先ほどと打って変わって笑顔に冷たさを帯びて口を開いた。
『いつまでも自分より強い者から逃げるのは止めにせい。いつまでも遥の影に隠れていては、自分の守りたいものができた時、何も守れんぞ。』
『……!!』
ズバリと俊の心の内と、核心をついたおじいちゃんの言葉に、俊はとても堪えたようで、ぎゅっと私の制服を握った後、ゆっくりと私の腰に回していた腕を離した。
『…道場はこっちじゃ、来なさい。』
今までの冷徹な微笑みなんてなかったかのように、いつものにこやかな表情を見せたおじいちゃんは、道場の方へとスタスタと向かっていく。

