「そんなの、元はと言えば黒王子が悪いんじゃん!勝手に確証もない話で人をコケにしてさ!…私も言い過ぎたとは思ってるけど、……まぁ、そのおかげで気付いたんじゃないの。どれだけ自分が無神経なこと言ったのか。…だからだよ。」
黒王子が優しいなんて…ないない。
あれは、きっと、自分も悪いことしたなって、やっと気付いたからだよ。
フンッ、とそっぽを向いた私に、目の前の親友は眉間に皺をよせていた。
『……無神経なのは遥じゃない?』
「え…?」
想いもよらない言葉に、私は横に向けていた視線を明日香に戻す。
『黒王子の前で、“白王子の方が良かった”なんて、いくら何でも本人に言うべきことじゃないでしょ。』
「それはっ、」
売り言葉に買い言葉というやつで、――という反論は、明日香が放つ冷たい雰囲気に呑まれてしまってできなかった。
『それに、黒王子が優しくないなんてこと、絶対にないと思う。』
「え…?……なんで、明日香がそんなこと――」
“知ってるの?”
そんな疑問詞は、教室内に鳴り響いたチャイム音でかき消されてしまった。
『じゃあね。しっかり頭冷やしなさいよ。』
茫然とする私を余所に、明日香はそう言って自分の席に戻って行った。

