――カツンッ

「……っ、」


数分後、完全に私は豊川先生のペースにのまれ気味となり、攻めの一打が中々決まらずに守りの姿勢を保つのに精一杯となっていた。

初夏のせいか、試合が長引けば長引くほど、剣道着の中の体感温度は上がっていき、汗が噴き出てくる。

体力的にも、一打を繰り出せるのがやっとだろう。


竹刀がぶつかり合った瞬間、審判が真ん中に入り、態勢を正し、やり直しとなった瞬間。


今しかない、と思った私はすぐに竹刀を前へ突き出そうと腕をわずかに振り上げた瞬間、


パンッッ

『どぉおおおーうっ』

「ッ――!!」


がら空きになった左横腹に叩き込まれた竹刀。

態勢を戻したあの瞬間、わずかに私の気が緩んでいたのを先生には見抜かれていたらしく、先に華麗なる一本を取られてしまった。

あまりの速さに、守りの姿勢に整える暇もなかった。

審判が白旗を上げたとき、私の負けが確定した――。


刹那、道場内に湧き上がる歓声。

それは私が負けたことにより、剣道部への入部が確定したことを告げていた。