5分後、最終試合が開始となった。

目の前には、面をかぶった豊川先生。

体格も全然異なるため、目の前にいるだけで威圧感を感じる。


『礼!』


一礼し、対局した形でおさめていた剣を抜き、互いに構えたとき――


『はじめっ!』


試合開始の声が上がった。

今までとは違う緊張感と緊迫した空気。

面から覗く豊川先生の瞳は真剣そのもので、試合前に掛けられた言葉が嘘ではないことを痛感させられる。


一瞬の気のゆるみが命取り。

それを肌に感じ、ほんの一瞬、竹刀を握る手が震えてしまった。


カツンッ、カッ、カッ


攻めに行きたくて竹刀を前に振ろうとするが、相手の防御も固く、そう簡単には破れない。

竹刀と竹刀が擦れ合う音だけが道場内に響き渡っていた。