鏡で映しているかのように同じ態勢で向かい合う体操着の私と学ランの男子。
私がぶつかった相手は、まるで漫画でよくあるシーンのように絶世の美男子だった。
――格好良い。
この一言に尽きる。顔の良し悪しなんて重要じゃないと思っている私でも、数秒間見惚れてしまうほど、目の前で眉間に皺を寄せて痛みをこらえている彼は格好良かった。
『――おい、何見てんだよ。』
「っ!」
見惚れてたのなんて、たったの数秒。
すぐに私に向けられた苛立ちを含んだ低い声に我に返った。
その瞬間、
キーンコーンカーンコーン…
「やばっ…!」
校舎に鳴り響く4限目の授業開始を告げるチャイムに、身体が飛び上がる。
遅刻決定…!
「ごっ、ごめんなさい…!ちょっと今急いでるんで、折入った話はまた今度…!」
せめて準備体操が始まる前には追いつきたいと、体育の件が一気に脳内を占領した私は、私を睨んでいる彼にガバッと頭を下げてすぐにその横を通り過ぎようとした。

