『じゃあ石川さん、こっちに来てくれる?今からルールを説明するから。』
そう言われて、船橋先輩の後を追えば、道場の真ん中まで連れて来られた。
その場で、数名の剣道部員と真正面から向かい合う形となる。
『これから石川さんには、彼らと試合をしてもらうわ。石川さんが全員から一本を先取すれば石川さんの勝ち。石川さんがこのうちの誰かから一人でも一本を先取されれば石川さんの負けってこと。』
「……!」
向かい合う部員たちは全員、次の都大会に出場するメンバーだと聞いた時、軽い気持ちでは戦うことのできない相手だと察した。
『一応主将はケガで今回の試合には参加しないけど、それだとあまりにもこっちが不利だから――…豊川先生!』
『あ?』
「??」
船橋先輩に呼ばれて、隅の方で私たちを傍観していた剣道部の顧問である豊川先生がやってきた。
『先生って確か、剣道5段でしたよね?』
「えっ」
『ああ、それが?』
思わず、修哉さんと同じ段位を持っていた豊川先生を見つめてしまう。
5段…すごい…。
『先生も、この試合に参加してください。』
『……は?』
「え…?」
感心していた矢先、船橋先輩からの思わぬ提案に、私と先生はそろって茫然としてしまった。

