――な、なんでこんなことに…。
剣道部の更衣室で、私は道着を前に頭を抱えていた。
事の発端は、船橋先輩の放った、勝負の一言。
その内容というのが、私にとってとても納得のいくものではなかった。
“『――石川さん!こうなったら、一か八かよ…!剣道部員全員と、勝負して!』
「…は?」
『石川さんが全勝したら私の負け。石川さんの剣道部入部の話は白紙にするわ。でも…一回でも負けたら――その時は、石川さんには剣道部に入部してもらうから!』
「ちょっ、ちょっと待っ――!」
『いいだろう。』
「はぁ!?」
『こいつが勝とうが負けようが、実行委員の件は決定事項なんだからな。』”
そんな、理不尽極まりない会話を思い出して、さらに私は肩を落とす。
――コンコンッ
『石川さん?準備できたー?』
扉越しに、船橋先輩の声が聞こえる。
びくり、とその声に驚きながらも、すぐに行きます!と答えた私は、道着に身を通し始めた。

