は…――はぁ?
この時、黒王子以外全員の心の声は、完全に一致していたと思う。
シーン…と静まり返る中で、あまりにも誰も何も発さず、固まっているものだから、時間さえ止まってしまっている気がした。
『え…っと、斗真…?何、言ってるの?』
頬を引き攣らせながら、言葉を乗せる白王子の声は、あまりの驚愕で声が若干震えていた。
『あ?何って、そのまんまの意味だけど?』
何も問題はないはずだ、とでも言いたげな顔をしている黒王子は、ずっと私の左腕を掴んだまま。
黒王子が私に触れている箇所だけが、なんだか熱く感じるが――きっと気のせいだ。…うん、気のせいに違いない。
『ちょっ…ちょっと待って!』
黒王子の幼馴染である白王子さえも彼の意図を理解できないでいる中で、船橋先輩が焦っているような声色で黒王子に待ったをかけた。
『貴方…、一体何なの?私は、石川さんに頼んでいるのよ?』
『あ?だから、それが無理っつってんだよ。』
『はぁ?!』
『チッ…だから、コイツは今日付けで実行委員になったから、アンタの部に回すことはできねーって言ってんだよ。』
仮にも先輩に向かって舌打ちをかまし、面倒くさそうにさっきの発言の意図を口にした黒王子。
私を挟んで黒王子と船橋先輩はにらみ合いの冷戦を繰り広げる中、私は黒王子の意図をようやく理解できて、なんだ…と、納得するのと同時に、少し気分が落ち込んでしまう。
(……え、何で落ち込んでんの?私。)
自分の心の変化についていけない私を余所に、船橋先輩が黒王子に向かってつっかかっていた。

