黒王子は不器用な騎士様!?




その声に反応して振り返れば、こちらへと駆け寄ってくる女子生徒の姿があった。

そして、ある程度の距離に近づいたとき、私は思わず目を丸くしてしまった。

それは――…


『ここにいたのね!石川さん!』

「っ…え……?」


目の前に現れたのは、先週の金曜日の昼休みに私の教室にやってきては、突然私に剣道部に入らないかと勧誘してきた先輩だった。

確か名前は――…船橋さん、だったっけな…?

いきなり現れた人物に、私は戸惑いを隠せない。

それは、私の背後にいる黒王子と白王子も同じだったようで、ただじっと船橋先輩を見つめている。


『私…っ、やっぱり貴女のこと、諦められないの…!』

「え…あの…?」

『一生のお願い!剣道部に、入部してくださいっ!!』

「えっ!?ちょっ…先輩!?」


突如目の前で、華麗なる土下座を見せた先輩を前に、私は更に驚き、戸惑う。

目まぐるしく訳の分からない方向へと進んでいく展開に、私の脳は全く追いつくことができていない。