運よく心優しい2組の子から体操服を借りることに成功した私は、風紀委員の子から頼まれた教室の戸締りを早急に済ませる。
授業が始まるまであと1分。
早くいかなくちゃ…!
授業開始の1分前ともなると廊下に出ている生徒はほんの数人しかいなかった。廊下を走っている途中、遠くで先生から廊下を走るなと注意されたけれど、今はそれどころではない。
体育の遅刻の罰として課される授業後の片付けだけはしたくないのだ。
階段を駆け下りて1階に着いた私は、靴箱に急いで向かう。
廊下のガラス窓から校庭を見れば、もうほとんどの生徒が集合していて体育の先生の前で並んでいた。
うう……っ!何で体操服なんて大事なもの忘れてきちゃうかな…っ!?
おじいちゃんに褒められて有頂天になって鞄に体操服を入れ忘れた今朝の自分に喝を入れながら、靴箱に続く曲がり角を曲がった瞬間――
ドンッ――ガシャンッッ
「わっ!?」
皆がいる校庭に気を取られていた私は前方不注意のせいで、曲がり角の奥にいた人物に思いっきりぶつかってしまった。
走っている勢いのまま、向かい合わせにぶつかってしまったからか、反動で私の身体は進行方向とは真逆の方向へと投げ出される。
床に叩きつけられた左半身が痛んだ。
「ったた…!」
『いってーな…』
倒れこんだ身体をゆっくりと起こした瞬間、目の前で私と同じように倒れていた人物と目が合った。

