『…石川遥。』
「?」
いきなり黒王子に名前を呼ばれたと思って顔を上げれば、さっきまでそばにいたはずの白王子がいなくなっていた。
目の前には私をいつもの冷たい目で見下ろしている黒王子、ただ一人。
これから何を言われるのだろうと、私は無意識に全身に力が入る。
『――9月の鑑賞遠足の実行委員長になったから。』
「……は?」
さも、当たり前のように言われた言葉に、私はその場でフリーズした。
私が、実行委員長――だ?
『じゃ、そーゆうことだから。』
それだけを言って、放心状態の私を置いてどこかへ行こうとする黒王子を、私は咄嗟に引き止める。
「ちょちょちょっ…ちょっと待った!」
『あ?』
っ――…
あ?じゃないでしょう!?
何?実行委員長って…!9月の鑑賞遠足?なんじゃそりゃあ!?
初耳だらけの単語ばかり羅列されて、はいよろしく、と言われても、飲み込むことなんてできるわけがない。

