『早く行ってきなさいよ~!愛しの黒王子が待ってるわよ?』
「愛しのって何!?その冗談、マジで笑えないから!」
『っ、そんなに怒んなくてもいいじゃんー!』
今の私に、黒王子に関するジョークなど、一切通用しない。
それを今のくだりで察した明日香は、はぁ、と今朝と同じく溜め息を吐いてみせた。
『…とにかく、すっぽかすのは良くないって。』
「すっ…ぽかすつもりは…ない、けどさぁ……」
『じゃあ、何でここにしがみつくように居座ってんのよ。』
「うっ……」
そこを突かれると痛いわけで。
心も体も、生徒会室を拒否しているのがよく分かる。
だって、行ったら何言われるのか、何されるのか分かったもんじゃない。
「代わりに、明日香行く?」
『行く!…ってバカ!黒王子のご使命はアンタでしょ!ほらっ、グダグダ言ってないで立つ!』
グイッと、女子とは思えないような強い力で腕を引っ張られた私は、不覚にもガタッと音を立てて、席を立ってしまった。
いつもの面倒くさそうな素振りしか見せない明日香が、テキパキと私の通学カバンを私の肩にかけると、おもいっきり私の背中を押した。
『女は度胸!何も考えずに行ってこい!』
そんな言葉を背中に受けつつ、私は強制的に教室を追い出されたのだった。

