『……別に。気にしてねぇし。』
「……え…っ?」
数秒後、黒王子から返ってきた言葉は想像以上に柔らかな言葉だった。
……もっと、罵られるかと思ったのに…。
フイッと私から顔を背ける黒王子を見上げながら、脳裏で明日香に言われた言葉を思い出す。
"黒王子は、遥と思っていることは違うみたいよ?"
ああ、もう、調子が狂うじゃないか。
明日香は、黒王子は冷酷でドSな人だと言っていたけど。
……意外と、優しいところもあるのかも…?
「あ、ありがとう…。」
『…ん。』
今まで、胸をつっかかえていた何かが取れたような感覚を覚えて、安堵する。
ホッと一息ついて、じゃあ、とクラスに戻ろうとすると、まだ話は終わっていないと引き止められてしまった。
「…何?」
振り返って、黒王子を見上げる。
……本当、顔だけは完璧だなぁ、なんて、やっぱり少し思ってしまう。
河上さんは、黒王子のいったいどこがお気に召しているのだろうか、とも疑問に思う。
先程、黒王子の意外な一面を垣間見た私だけど、それだけで今までの黒王子の印象を覆されたわけではない。

