「そ…っんなこと言われても、もう会うことも、喋ることもないし…。」
黒王子は、秀才が集まる特別クラスだ。
黒王子の成績が落ちない限り、彼と私が同じクラスになることはないだろう。……私の学力が特別クラスレベルに到達することなんてないし。絶対。
元々、接点のない2人だ。
これ以上、何も発展しないだろう。
昨日の夕方、私と黒王子の関係性は、ゼロに戻ったのだ。――いや、元々関係性なんて築かれていなかったけれど。
『……さぁ、それはどうだろうね?』
「え?」
ニタリとしたドヤ顔で、意味深発言を飛ばした明日香に首を傾げていると、クラスメイトに名前を呼ばれた。
「何?」
『かっ、神城くんが呼んでるよ…!』
頬を赤く染めたクラスメイトが、私に駆け寄ってくるなり、そう言った。
神城って――…
『ほらね。黒王子は、遥と思っていることは違うみたいだけど?』
「っ……」
早く行きなさいよ、と明日香の目が言っていた。
反射的に廊下を見れば、ドア付近で私を待っている黒王子がいる。
逃げられない、ってことか…。
行きたくない気持ちはとても強いが、"昨日のこと、ちゃんと謝ってくんのよ"という明日香の言葉を背後に受けつつ、廊下に出た。

