「それは、それだけは絶対!ぜーったい、ナイから!」
『あーら、何でそう言い切れるの~?』
すまし顔で、私を試しているかのような態度を見せる明日香に、血が上っていく。
「あっ…あのね!私の中で、黒王子は最低最悪なの!そんなヤツを好きになるなんて、ありえないでしょ!?」
『ありえないって…これだから遥は…。』
「何よ!?」
さっき以上に重苦しい溜め息をついてみせる明日香を睨む。
何もかも、明日香は全てを見透かしているようで、それが何だか癪に障る。
確かに明日香は私の良き理解者だけど、ここまで私をけちょんけちょんに言われるのは、納得いかないのだ。
『遥の中で、黒王子がどん底のポジションにいるのはよく分かったわ。でも、マイナスから始まったら、その先はプラスしかないのよ。』
「は……?」
私の不意を衝く明日香の言葉に、私は固まってしまう。
さっきの威勢の良すぎた態度はどこへやら。
ただただ、訳の分からないことを言い出した明日香を見つめるしかない。
『底辺まで下がってんだから、それ以上に下がることなんてないでしょ?黒王子のポジションは上がる一方。…そんな中で、遥が黒王子に恋に落ちない確証なんてどこにもないでしょーが。』
「な……っ、」
私より、2段も3段も上に行く明日香の恋愛観に、私はもう呆然とするしかない。

