まさか、明日香がそこに引っかかってくるとは思ってなかった私は、首をかしげる。

そんなに有名なの?河上さんって。

私が流行や噂話に疎いことを知っている明日香だけど、訳が分かっていない私を見て、明日香はまた溜め息をついてみせた。


「えっ、何で溜め息吐くのよ!?」

『アンタの情報網の薄さに対してに決まってんじゃない、バカ。』


ば、バカって…。

今日、何度聞いたかもわからない、明日香の暴言に、もう抵抗が付き始めている自分が恨めしい。


『河上 栞奈って言ったら、白黒王子と並んで有名な子じゃない。きっと河上さんのこと知らないのって、遥だけだと思うよ。』

「え……そんなに!?」

『あったりまえでしょ!?あんな可愛い顔して男共が黙っておくはずがないし、彼女、白黒王子の幼馴染なんだから、周りの女共だって放ったらかしにするわけがないじゃない。良くも悪くも、河上さんの周りには人が絶えないらしいよ。』

「そっ、そうなんだぁー…。」


河上さん、…あんなナリしてるけど、結構大変なんだなぁ。

しみじみと感慨深いものを感じていると、上から盛大なチョップが私の頭に降りかかった。