私のオオカミくん。

そんな昔の思い出に浸っているところに、イケメン男がスーツの男を連れて戻ってきた。

引っ越し屋の従業員…ではなさそうだ。

「今日はもう大丈夫なんで、すいません。ありがとうございました。」

イケメンさんがそう一声掛けるとスーツ男は私に気付き、軽く解釈をした後

「それでは、失礼いたします。」

と、さっさとトラックに乗って去って行った。

「はい、どうぞ。」

トラックが小さな点に見えて来た頃、イケメンさんは小銭を手渡してくれた。

「すいません、どうもありがとうございました。」

深々と頭を下げる私。
と、その時_

ぐいっ!

と勢いよく腕を引っ張られた。
ポスッとイケメンさんの身体に包まれる。

「えっ、と…あの、イケメンさん?」

上を見上げる様な形で、戸惑いながらも彼に尋ねる。

「あはは…イケメンさんって。
んー、やっぱ思い出してくれない?」

先程の雰囲気とはうって変わって、色っぽい笑みで私を見つめるイケメンさん。
思い出すって…会ったことなんて無い筈。そんな冷静な事を考えていられたのも束の間。

スッ_
と彼の左腕が私の腰に回って、右腕は私の後頭部に回る。

「え、」

目を見開いた時、唇には柔らかい感覚。

反射的に私は彼の憎たらしい程キレイな頬に、平手打ちをかましていた。