「後、っもうちょい、」

「すいません…。
スカートの中、見えますよ?」

と、這い蹲る私の後ろから呼び掛けがあった。
ゆったりとした動作で振り返る。
とそこには_

「うっわ、美人さん。」

そう、まさに美人。
鼻筋が通っていて、シュッとした輪郭、眉はキレイで長くて…バランスの取れた顔だこと。
それに長身で細身で、手脚が長いと来た。
何処ぞのモデルなのか、君は。

「あはは、ありがとう。」

私の呟きに対しての返しなのか、極上なスマイルでそう返してくるそのイケメンさん。
と、敬意を込めて『イケメンさん』と呼ぶ事にしておいた。

(ん~、なんか見覚えがあるような気がしなくも無い…。)

何処か懐かしさが残るその笑顔。
するとイケメンは苦笑いに私に尋ねてきた。

「えっと、まず。
どうしてそんな格好してるのかな?」

地面に這い蹲ったまま彼を見上げる形になっている私。
おっと、これは失礼だ。

「すいません。
小銭をトラックの下に落としちゃって。」

私はスカートを払いながら、立ち上がる。

「あぁ、なんだ、そういう事ね。
移動させるから、ちょっと待っててね?」

又もや優しい笑顔で言ったイケメンさん。
笑うと目が優しく垂れると…ほう。
と、人間観察に入ってる内に男は空き家へと入っていった。

(あ、ここ。
やっと人、入ったんだ。)

前の住人は10年ほど前に引っ越していって、そのままずっと空き家。
とても愛想がいい家族で、すんごい金持ちだった気がする。そこの子供とよく遊んだものだった。
女の子で、稀に見ぬ美少女だった。
名前は……なんだったか、ユイちゃんだったのは確かなんだが。