「俺は以前『GDでも吸って死んじまえ。』ってつぶやいた男を見たことがある。」
「GDで死ねなんて…、相当ソマンに詳しい奴ですね。」
そう言った達也を、全員が氷ついたような目で見た。口火を切ったのは翔子だ。
「そいつが犯人じゃない。」
哲平が拳を自分の頭に当てて悔しがった。
「くそっ、手の届くところに犯人が居たのに…。俺は馬鹿か。」
「後悔はまだ早いですよ、副長。つまり…。」
哲平は、仁王立ちになって全員を見た。
「そう、俺だったら犯人を特定できるということだ。」
翌朝早々に、哲平はソマン事件捜査本部の入口に居た。昨夜のうちに上司に報告した内容が、瞬時に捜査本部にあがったのだ。捜査本部に一歩足を踏み込むと、ボード、電話、パソコン、調書が散乱する。事件対策本部ではよくある風景なのだが、騒然とした室内の中で忙しく、しかも荒っぽく働く12人ほどの捜査官は、目つき、言葉使い、立ち振る舞いが、明らかにワルだった。警察署でワルというのも変な話なのだが、哲平はなぜか血がうずくのを感じた。正義の為に働くワル。交機とはまったく違った人種がそこに居た。実際若き頃は、ワルを尽くした哲平だからこそ、こんな雰囲気にも物おじせず、いやかえって懐かしいとさえ感じてしまうのだ。
「坊や、なんか用か?」
場の雰囲気に呑まれて立ち尽くす哲平に、捜査官のひとりがドスの利いた声で問い掛けた。
「招集を頂きました。日の出署の桐谷です。」
直立不動で答える哲平に、一番奥の机にいた初老の捜査官が呼びかける。
「おう、待っていたぞ。こっちへ来い。」
哲平は呼ばれた机の前まで進み、あらためて直立敬礼した。
「日の出署、交機白バイ隊の桐谷哲平警部補であります。」
「白バイ隊の桐谷?ああ、お前があの…いや今はどうでもいい、テロ対策室長の狩山だ。早速話を聞かせろ。」
哲平は昨夜達也や翔子との話しを繰り返した。
「なるほど…お前は犯人の顔を見て覚えているのだな。」
「あくまでも、犯人かも…で確証はないのですが…。」
「いや、『かも』でも、犯人が捕まっていない現状では貴重な情報だ。おい、ケンジ。すぐに似顔絵捜査官を呼べ。」
「ヘイ。」
ケンジ捜査官のやくざ調の返事が、哲平の心をくすぐった。しかし今どき似顔絵とは?
「おい、ボウズ。今どき似顔絵か、なんて思ってるだろう。」
「GDで死ねなんて…、相当ソマンに詳しい奴ですね。」
そう言った達也を、全員が氷ついたような目で見た。口火を切ったのは翔子だ。
「そいつが犯人じゃない。」
哲平が拳を自分の頭に当てて悔しがった。
「くそっ、手の届くところに犯人が居たのに…。俺は馬鹿か。」
「後悔はまだ早いですよ、副長。つまり…。」
哲平は、仁王立ちになって全員を見た。
「そう、俺だったら犯人を特定できるということだ。」
翌朝早々に、哲平はソマン事件捜査本部の入口に居た。昨夜のうちに上司に報告した内容が、瞬時に捜査本部にあがったのだ。捜査本部に一歩足を踏み込むと、ボード、電話、パソコン、調書が散乱する。事件対策本部ではよくある風景なのだが、騒然とした室内の中で忙しく、しかも荒っぽく働く12人ほどの捜査官は、目つき、言葉使い、立ち振る舞いが、明らかにワルだった。警察署でワルというのも変な話なのだが、哲平はなぜか血がうずくのを感じた。正義の為に働くワル。交機とはまったく違った人種がそこに居た。実際若き頃は、ワルを尽くした哲平だからこそ、こんな雰囲気にも物おじせず、いやかえって懐かしいとさえ感じてしまうのだ。
「坊や、なんか用か?」
場の雰囲気に呑まれて立ち尽くす哲平に、捜査官のひとりがドスの利いた声で問い掛けた。
「招集を頂きました。日の出署の桐谷です。」
直立不動で答える哲平に、一番奥の机にいた初老の捜査官が呼びかける。
「おう、待っていたぞ。こっちへ来い。」
哲平は呼ばれた机の前まで進み、あらためて直立敬礼した。
「日の出署、交機白バイ隊の桐谷哲平警部補であります。」
「白バイ隊の桐谷?ああ、お前があの…いや今はどうでもいい、テロ対策室長の狩山だ。早速話を聞かせろ。」
哲平は昨夜達也や翔子との話しを繰り返した。
「なるほど…お前は犯人の顔を見て覚えているのだな。」
「あくまでも、犯人かも…で確証はないのですが…。」
「いや、『かも』でも、犯人が捕まっていない現状では貴重な情報だ。おい、ケンジ。すぐに似顔絵捜査官を呼べ。」
「ヘイ。」
ケンジ捜査官のやくざ調の返事が、哲平の心をくすぐった。しかし今どき似顔絵とは?
「おい、ボウズ。今どき似顔絵か、なんて思ってるだろう。」



