水冷60度V型ツイン1246ccエンジンの振動は、身体の芯をしびれさせる。それはミカも感じることができた。そのせいでもないのだが、ミカは、逞しい哲平の背中にへばりつきながら、以前懐に抱かれたテッペイが、イチコロで哲平に参ってしまった理由がわかったような気がした。
ふたりの乗ったバイクは、波止場の屋台のラーメン屋に着いた。獰猛なエンジンがチリチリと音を立てながら息を休める傍らで、ミカと哲平はラーメンをすすった。
「小汚い屋台ですが…おいしいですか?」
「おいしいです。」
「正直に。」
「…ちょっと脂っぽいかも。それに量も多いかな。」
「やっぱりね。」
哲平はいきなりミカのラーメンに箸を突っ込むと、焼き豚と麺をつまみ自分の器の中に入れてミカのラーメンの量を減らした。彼の粗暴とも思える武骨さは、常にその根底に優しさがある。その優しさがわかっていたなら、あのゲンコツだって許すことができたはずなのに…。豪快にラーメンをすする哲平を見ながら、ミカはそう思った。
「もうひとつ正直に言っていいですか。」
「どうぞ。」
「正直…哲平さんに合わせるのは大変です。」
「でしょう…。」
「でも、これだけ正直にモノが言える人は哲平さんが初めてです。」
いつの間にか自分の名の呼び方が変わっている。どうせその意味を考えたところで、自分には到底分るまいと、哲平は器に残る最後の汁を口の中に流し込んだ。
「だから…もしよろしければ、哲平さんの携帯の番号を教えていただいてもいいかしら?」
ミカの言葉に、哲平は飲んでいた汁を喉に引っ掛けてむせってしまった。なんで『だから…』なんだ?やっぱり俺は女の考えている事なんてさっぱり分からない。
路上で待機していた次郎の業務用の携帯に、配送依頼メールが着信した。開いてみると、2本の仕事依頼。つまり2本持ちの仕事が来た。本来バイク便の配送は、仕事配分の公平性のため、荷受けして届けが終わるまで次の仕事が入らない、つまりひとり一本ずつというのが原則だ。しかしたまに、周りに待機ライダーがいないとか、配送の効率性が優先され、ほぼ同じ位置で荷受けする仕事が同時に2本来ることがある。一回の走行で2本分の仕事が出来るのだから、受けたライダーには美味しい。
「朝からついてるぜ…。」
次郎は、ほくそ笑みながらふたつの配送伝票を作成すると、まず一本目の荷受先に走る。
ふたりの乗ったバイクは、波止場の屋台のラーメン屋に着いた。獰猛なエンジンがチリチリと音を立てながら息を休める傍らで、ミカと哲平はラーメンをすすった。
「小汚い屋台ですが…おいしいですか?」
「おいしいです。」
「正直に。」
「…ちょっと脂っぽいかも。それに量も多いかな。」
「やっぱりね。」
哲平はいきなりミカのラーメンに箸を突っ込むと、焼き豚と麺をつまみ自分の器の中に入れてミカのラーメンの量を減らした。彼の粗暴とも思える武骨さは、常にその根底に優しさがある。その優しさがわかっていたなら、あのゲンコツだって許すことができたはずなのに…。豪快にラーメンをすする哲平を見ながら、ミカはそう思った。
「もうひとつ正直に言っていいですか。」
「どうぞ。」
「正直…哲平さんに合わせるのは大変です。」
「でしょう…。」
「でも、これだけ正直にモノが言える人は哲平さんが初めてです。」
いつの間にか自分の名の呼び方が変わっている。どうせその意味を考えたところで、自分には到底分るまいと、哲平は器に残る最後の汁を口の中に流し込んだ。
「だから…もしよろしければ、哲平さんの携帯の番号を教えていただいてもいいかしら?」
ミカの言葉に、哲平は飲んでいた汁を喉に引っ掛けてむせってしまった。なんで『だから…』なんだ?やっぱり俺は女の考えている事なんてさっぱり分からない。
路上で待機していた次郎の業務用の携帯に、配送依頼メールが着信した。開いてみると、2本の仕事依頼。つまり2本持ちの仕事が来た。本来バイク便の配送は、仕事配分の公平性のため、荷受けして届けが終わるまで次の仕事が入らない、つまりひとり一本ずつというのが原則だ。しかしたまに、周りに待機ライダーがいないとか、配送の効率性が優先され、ほぼ同じ位置で荷受けする仕事が同時に2本来ることがある。一回の走行で2本分の仕事が出来るのだから、受けたライダーには美味しい。
「朝からついてるぜ…。」
次郎は、ほくそ笑みながらふたつの配送伝票を作成すると、まず一本目の荷受先に走る。



