店の雰囲気というよりは、ミカの華麗な出で立ちに気後れして、いつもの哲平らしさが出ない。ギャルソンがメニューを持ってきたが、カタカナ書きはあるものの、何が何やらさっぱりわからない。
「何かお飲みになります?」
「いえ、今日はバイクできましたから…。」
ミカとの会食を無事に終わらせるために、すすめられても飲まないようにわざとバイクでやってきたのだ。
結局、オーダーはミカに任せて、哲平は食事が来るまで水ばかり飲んでいた。
「今夜は母親じゃないはずなんですけど、テッペイの話しをしてもいいでしょうか?」
「どうぞ。」
「テッペイは桐谷さんにお会いしてから、なんか変った気がします。」
「そうですか…。」
「昔は大概のことはわかったんですが、桐谷さんにお会いしてからテッペイが何を考えているのか、わからなくなって…。」
「それって、自分を責めてます?」
「半分…。」
「まいったな…はっきり言いますけど、それは自分に会ったからではなく、そういう年頃になったんですよ。今、男になろうとしてるんです。」
テッペイは目の前の水の入ったグラスを飲み干した。
「今までは、お母さんが…。」
「ミカと呼んでください。」
ミカが毅然と哲平に言った。しばし言葉を飲んだ哲平ではあったが、ミカの勢いに押され言いなおす。
「今までは、ミカさんがコッペイを守っていたけれど、やがてコッペイは成長して、今度は彼が家族を守るようになるんです。」
「頼もしいような、寂しいような…。」
ふたりの間に、食事が運ばれてきた。どのナイフとフォークを使うのか迷ったが、面倒になった哲平はとにかく一番大きいナイフとフォークを掴んだ。哲平はナイフの扱いに苦闘しながら言葉を続ける。
「ふたりで寄り添って生きてきたから、気持ちはわかりますが、いつかコッペイが飛び立って行くことを、ちゃんと覚悟しておいてくださいね。」
「なんか、悲しくなってきました。」
「そんなことないですよ。ミカさんは女性としても本当に魅力的なんだから、死ぬまで連れ添える人はこれからでもいくらでも見つかります。」
「まだ女性として魅力があると思います?」
「ええ、充分。自分も名乗り出たいくらい魅力的ですよ。」
ミカの手が止まった。しまった。余計なこと言ってしまった。こんなことを口走るなんて、なにか取調室で誘導尋問されている気分だ。哲平は慌てて前言を取り消す。
「何かお飲みになります?」
「いえ、今日はバイクできましたから…。」
ミカとの会食を無事に終わらせるために、すすめられても飲まないようにわざとバイクでやってきたのだ。
結局、オーダーはミカに任せて、哲平は食事が来るまで水ばかり飲んでいた。
「今夜は母親じゃないはずなんですけど、テッペイの話しをしてもいいでしょうか?」
「どうぞ。」
「テッペイは桐谷さんにお会いしてから、なんか変った気がします。」
「そうですか…。」
「昔は大概のことはわかったんですが、桐谷さんにお会いしてからテッペイが何を考えているのか、わからなくなって…。」
「それって、自分を責めてます?」
「半分…。」
「まいったな…はっきり言いますけど、それは自分に会ったからではなく、そういう年頃になったんですよ。今、男になろうとしてるんです。」
テッペイは目の前の水の入ったグラスを飲み干した。
「今までは、お母さんが…。」
「ミカと呼んでください。」
ミカが毅然と哲平に言った。しばし言葉を飲んだ哲平ではあったが、ミカの勢いに押され言いなおす。
「今までは、ミカさんがコッペイを守っていたけれど、やがてコッペイは成長して、今度は彼が家族を守るようになるんです。」
「頼もしいような、寂しいような…。」
ふたりの間に、食事が運ばれてきた。どのナイフとフォークを使うのか迷ったが、面倒になった哲平はとにかく一番大きいナイフとフォークを掴んだ。哲平はナイフの扱いに苦闘しながら言葉を続ける。
「ふたりで寄り添って生きてきたから、気持ちはわかりますが、いつかコッペイが飛び立って行くことを、ちゃんと覚悟しておいてくださいね。」
「なんか、悲しくなってきました。」
「そんなことないですよ。ミカさんは女性としても本当に魅力的なんだから、死ぬまで連れ添える人はこれからでもいくらでも見つかります。」
「まだ女性として魅力があると思います?」
「ええ、充分。自分も名乗り出たいくらい魅力的ですよ。」
ミカの手が止まった。しまった。余計なこと言ってしまった。こんなことを口走るなんて、なにか取調室で誘導尋問されている気分だ。哲平は慌てて前言を取り消す。



