ミカは素早くメモを書いて哲平に渡すと、走るようにコッペイのいる病室に戻っていった。歳に似合わぬ少女走りしやがって…。ミカが残した香りを感じながら、哲平はそう呟いた。しかし、なぜ自分はこんなに緊張しているのだろうか。
ミカが指定したレストランに、哲平は約束の時間より早めに着いた。もとよりキュイジーヌなどという言葉を今まで聞いたこともない哲平である。フランス語で名前すら読めないレストランの席に着くと、相当場違いなところへ来てしまったと後悔し始めた。服装もライダーの皮ジャンにTシャツ。浮きに浮きまくっている。あたりを見回すと、他の客がこちらを盗み見している。哲平が劣等感にさいなまれている一方で、実は他の客たちはその長い脚と均整のとれた逞しい肉体が伺い知れる皮ジャンの男を、アクションスターの誰かであると囁き合っていたのが実情だ。そんなことは哲平にわかるはずもなかった。
白い室内の中で黒を主張するもうひとりの客が居た。見ると連れはいないようだ。しばらくするとその男は、ナイフとフォークを置き、ミネラルウオーターの入ったグラスを持ち上げ、ライトに透かし始めた。そして、鋭い声でギャルソンを呼ぶ。
「こんな雑菌が浮遊している水が飲めるか。さっさと変えてこい。」
ギャルソンが慌てて空のグラスを持ってきて、その男の前でミネラルウオーターを注ごうとすると、またその男が難癖をつける。
「そんな曇ったグラスに、俺が飲む水を入れるつもりか。」
哲平は呆れてその男を眺めていた。潔癖症も度を越している。切実な喉の渇きを知らない奴ほど、あんなことを言うんだ。
「GDでも吸って、死んじまえ。」
男が黒目がちな瞳を怒りに膨らませて呟いた言葉を、哲平は聞き逃さなかった。意味はわからなかったが、職業柄その男の顔を記憶のファイルの中に保管した。
「お待たせしてすみません。」
ミカがやってきた。薄いメイクにラベンダーのアイシャドーが印象的だ。上品で繊細な服でありながら、今日は多少肌の露出部分も大きく、セクシーな印象がある。哲平との食事の為におめかしをして来たのだろうか。
「別に…遅れてませんよ。自分が早く来すぎたんで…。」
ミカが指定したレストランに、哲平は約束の時間より早めに着いた。もとよりキュイジーヌなどという言葉を今まで聞いたこともない哲平である。フランス語で名前すら読めないレストランの席に着くと、相当場違いなところへ来てしまったと後悔し始めた。服装もライダーの皮ジャンにTシャツ。浮きに浮きまくっている。あたりを見回すと、他の客がこちらを盗み見している。哲平が劣等感にさいなまれている一方で、実は他の客たちはその長い脚と均整のとれた逞しい肉体が伺い知れる皮ジャンの男を、アクションスターの誰かであると囁き合っていたのが実情だ。そんなことは哲平にわかるはずもなかった。
白い室内の中で黒を主張するもうひとりの客が居た。見ると連れはいないようだ。しばらくするとその男は、ナイフとフォークを置き、ミネラルウオーターの入ったグラスを持ち上げ、ライトに透かし始めた。そして、鋭い声でギャルソンを呼ぶ。
「こんな雑菌が浮遊している水が飲めるか。さっさと変えてこい。」
ギャルソンが慌てて空のグラスを持ってきて、その男の前でミネラルウオーターを注ごうとすると、またその男が難癖をつける。
「そんな曇ったグラスに、俺が飲む水を入れるつもりか。」
哲平は呆れてその男を眺めていた。潔癖症も度を越している。切実な喉の渇きを知らない奴ほど、あんなことを言うんだ。
「GDでも吸って、死んじまえ。」
男が黒目がちな瞳を怒りに膨らませて呟いた言葉を、哲平は聞き逃さなかった。意味はわからなかったが、職業柄その男の顔を記憶のファイルの中に保管した。
「お待たせしてすみません。」
ミカがやってきた。薄いメイクにラベンダーのアイシャドーが印象的だ。上品で繊細な服でありながら、今日は多少肌の露出部分も大きく、セクシーな印象がある。哲平との食事の為におめかしをして来たのだろうか。
「別に…遅れてませんよ。自分が早く来すぎたんで…。」



